2022年3月10日
ニューヨーク債券市場で、米長期金利の低下傾向が続いている。
ロシアのウクライナ侵攻で安全資産とされる米国債が買われているためだ。
長期金利が短期金利を下回る異例の現象が起きるとの観測も出てきた。
長短金利の逆転は歴史的に景気後退の予兆とみなされており、市場が警戒している。
重視されるのが「イールドカーブ (利回り曲線) 」と呼ばれる指標。
縦軸に金利、横軸に満期までの期間を用いたグラフで、通常は緩やかな右肩上がりを描く。
期間が長いほど価格変動などを見通しにくくなるため、投資家が高い利回りを求めるからだ。
長期金利の指標となる10年物国債と、金融政策の影響を受けやすいとされる2年物国債の利回りを比べると、その差は3月8日時点で0.24%。
年初には0.8%を上回っていたが、侵攻後に縮小に弾みがついており、異例現象の「逆イールド」 (inverted yield curve) が視野に入ってきた。
米連邦準備制度理事会 (FRB) の利上げ観測を織り込んで、2年物の利回りが上昇基調をたどっていることも背景にある。
逆イールドは2007年に起きたことがよく知られる。
2008年9月にリーマンショックが発生して世界的な景気後退期に突入したことから、その前触れだったと受け止められている。
足元では、欧米など各国の対ロシア経済制裁が厳しさを増していることも反映し、原油や穀物の先物相場の上昇に歯止めがかからない状況だ。
物価高と景気後退が同時に進む「スタグフレーション」のシナリオも現実味を帯びている。
(2022年4月1日号掲載)