Thursday, 25 April 2024

違法ドラッグ ① Illegal Drugs(2015.7.1)

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dr kim new     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。
その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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違法ドラッグ ①

Illegal Drugs

       
       

有名人が違法ドラッグに手を出して、事件を起こしたり、あるいは中毒になってマスコミに騒がれたりすることが多々ありますが、違法ドラッグは、有名人だけではなく、高校生、あるいは中小学生が手を出すほどに蔓延してきています。

アメリカでは、治療薬として使われているドラッグを違法または合法に手に入れて、中毒症になる人もいます。

マリワナから始まり、コカインやアンフェタミンなどに至るまでに、様々な合法、違法ドラッグの中毒になる人がアメリカでは後を絶ちません。

そうしたドラッグの中毒や使用は健康を害するだけでなく、犯罪や自殺など、社会にインパクトを与えることも少なくないので、ドラッグについての知識を持っておくことは、自分自身や家族を守るためにも大切です。

違法ドラッグあるいは中毒を起こすドラッグは、主にマリワナ、麻薬 (narcotics)、覚せい剤または中枢神経刺激薬 (Stimulants)、 幻覚剤 (Hallucinogens) などに区別されます。

この中で、モルヒネやアンフェタミンなどは治療薬として合法に処方されているので違法ドラッグではありませんが、対象になる疾患もないのに「違法」に使用されていることがあるので、ここではそういう意味で違法ドラッグに含めています。

米国司法省のDEA (麻薬取締局) の発行する資料に基づいて主要なドラッグを解説したいと思います。

マリワナ(Marijuana)

マリワナ (大麻) は1960年代のヒッピー文化と共に広く知られるようになり、若者を中心に様々な年齢層や社会的地位の人に使用されてきています。

今日では、医療用または個人使用がアメリカのいくつかの州で合法的に認められるようになりました。

マリワナは精神活性のある物質で、480種類以上の化学成分を含み、THCという物質が主要な成分と考えられています。

アメリカを含め広範囲の地域で栽培されています。

  • 俗称 ― Aunt Mary、Dope、Grass、Weed、 Pot。
  • 形状と使用 ― 大麻 (カンナビス) という草の、  花、茎、種、葉の混合物で、乾燥して刻み込まれ、緑色または茶色をしています。たばこあるいはパイプのように喫煙します。
  • 体に対する影響 ― 吸うと肺に入ったTHCが血液で脳まで運ばれ、幸福感、脱抑制、社会性の向上、音楽や芸術に対する感覚が高くなります。
  • 体に対する害 ― 嘔気、めまい、手指の振え、判断力の低下、記憶喪失、歩行困難、危険行為、精神的妄想や混乱、不安、パニック障害、身体的精神的依存性など。
  • 禁断症状 ― 頭痛、発汗、手指の振え、腹痛、落ち着きのなさ、睡眠困難など。

覚せい剤・中枢神経刺激薬(Stimulants)

合法的に製造され治療薬として使用されているものと、違法に製造・使用されているものとがあります。

医療用のものとしては、ADHDの治療薬であるアンフェタミン (Adderall、Dexedrine) やメチルフェニデート (Concerta, Ritalin)、肥満の治療に用いられるDidrexやBontril のような薬があります。

違法に製造・使用されているドラッグとしてはメタンフェタミン、コカインなどがあります。

  • 体に対する影響 ― 中枢神経興奮作用があり、陽気になる、精神的・身体的働きが高まる、食欲抑制、長時間精神的覚醒状態が続く。
  • 体に対する害 ― 手指の振え、頭痛、皮膚のほてり、胸痛、異常な発汗、嘔吐、妄想、パニック障害、幻覚、幻聴、依存性の形成、自殺や他殺の傾向、禁断症状としてうつ状態、不安、ドラッグの渇望、極端な疲労。

コカイン(Cocaine)

コカインは覚せい剤の一つで、非常に強い依存性が形成されます。

コカインは元々ボリビア、ペルー、コロンビアで育つコカの葉由来のドラッグで、アメリカで出回っているコカインの約9割はコロンビアから違法に輸入されています。

  • 俗称 ― Coca、Coke、Crack、Flake、Snow。
  • 形状と使用 ― 通常は白色の粉で、砂糖や局所麻酔薬に混ぜられていることもあります。粉を鼻で吸ったり、たばこのように喫煙したり、水に溶かして静脈注射として使用されています。
  • 体に対する影響 ― 喫煙したり静脈注射をすると数秒でコカインは脳に達し幸福感 (高揚感) を起こします。鼻での吸引では幸福感の発現に少し時間がかかります。幸福感以外にも、高い覚醒感、興奮をもたらしますが、コカインに耐性ができるようになり、より高濃度のコカインを枯渇します。依存性が出てきます。
  • 体に対する害 ― いらいら感、不安、妄想、精神的・身体的疲労、抑うつ感、不整脈、心筋梗塞などの虚血性心疾患、突然死、けいれん、脳卒中など。20代、30代の若い人で心筋梗塞になった場合、まずコカインの使用があったかどうかを調べます。
  • アンフェタミン(Amphetamine)
  • アンフェタミンは覚せい剤の一つで、医療の世界ではADHDの治療薬として合法的に処方されています。アメリカでは1930年代に鼻詰まりの治療薬として、鼻の吸入薬が市販されていました。その後、錠剤として製造され、ADHDなどの処方薬として広く使用されていますが、大学生に対する安易なADHDの診断のもと、アンフェアミンは非常に幅広く誤用されています。
  • 俗称 ― Crank、Ice、Speed Bennies、Uppers。
  • 形状 ― 錠剤または粉状、処方箋で出されるアンフェタミンはメチルフェニデート (Ritalin、Ritalin SR) アンフェタミン・デキストロアンフェタミン (Adderall) それにデキストロアンフェタミン (Dexedrine) です。
  • 使用 ― 錠剤または注射の形で使われます。俗称でアイスと呼ばれる結晶化されたメタアンフェタミンは吸入で使用されます。
  • 体に対する影響 ― 体に対する影響はコカインに似ていますが、影響の発現は緩やかで、効果は長時間持続します。
  • 体に対する害 ― 常用することによって総合失調症のような精神疾患を呈します。妄想、皮膚をつねる、ある考えに執着する、幻覚、幻聴、暴力行為、常軌を逸した行動。依存症になります。他に、血圧上昇、不眠、食欲減退、身体的疲労などがあります。
  • 禁断症状 ― うつ状態、不安、ドラッグへの渇望、極端な疲労。

(次号に続く)

 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
 
(2015年7月1日号掲載)

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