Thursday, 21 November 2024

I-9と人種差別 (2013.7.16)

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ishinabe_face.gif石鍋 賢子

米国カリフォルニア州弁護士

上智大学外国語学部英語学科出身。ビジネス系の移民法専門弁護士として20 年の経験を持つ。グレイ・ケリー・ウェア&フリーデンリッチ、ララビー&アソシエーツ等法律事務所勤務を経て、独立し、事務所設立。

米国弁護士会(ABA)、サンディエゴ弁護士会(SDCBA), 米国移民法弁護士会(AILA) 会員。サンディエゴ在住19 年。

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I-9と人種差別
       

Q 最近就労者に関するI-9フォームが新しくなったそうですが、どこで入手できますか?

 


A はい、3月8日改訂版が発行されており、5月7日以降は、新規採用者には新しいバージョンが使われなくてはならなくなっています。

新しいI-9フォームは、移民局公式サイト(www.uscis.gov)よりダウンロードが可能です。

 


Q I-9について、もう少し教えてください。

 


A I-9フォームは、1986年11月6日以降、新規採用者すべてについて、就労開始の初日に記入されなければならず、被雇用者が就職してから3年後、または退職後1年後、のうち後の日付まで保管してください。

I-9の目的は、本人確認と就労許可の確認で、規定のリストにある書類のどれかを証拠として提示することになっています。

ところが、I-9または書類の確認の際、うっかりした言動が人種差別になってしまうことがありますので注意してください。

 


Q 人種差別とは?

 


A 現行法では、法務省の特別法務部(OSC)は、社員4名以上の会社における人種差別行為を取り締まっています。

 


人種差別といっても4種類あり、①市民権や滞在資格によるもの、②国籍によるもの、③書類処理に関する不法行為、④報復行為、が含まれます。

なお、②について、社員15人以上の会社の場合は、均等雇用機会委員会(EEOC)が扱います。

それぞれ説明しますと、①は、アメリカ市民であるかないか、あるいは滞在資格による差別行為を行うことで、アメリカ市民、永住権保持者、亡命者、難民を保護するためのものです。

②は出生地、出身国、祖先、母国語、訛り、あるいは見かけや話し方が外人のようだ、ということによる差別行為、③は本人確認や就労許可の確認をする際、規定以上、あるいは規定以外の書類を求めること、一見本物のように見える書類を拒絶すること、被雇用者の市民権、滞在資格、または国籍により、特定の書類を見せるようにと要求すること、④はOSCやEEOCへクレームを出した人、差別疑惑の調査や捜査に協力する人、雇用者側の差別行為かもしれない事例に抗議する人、差別防止法による権利を主張する人、差別防止法による他人の権利を主張する人、などへの雇用者による脅迫、脅し、強制、あるいは報復行為です。

②から④は、すべての就労許可保持者を保護するためのものです。よくありがちな例としては、特定のビザを持っている人を優先雇用すること、特定の書類を見せるよう求めること(規定に列記されている書類のうちであれば、どれであっても、被雇用者が提示する書類を受け入れなければならず、雇用者側で、どの書類を見せるべきか指定してはいけない)、アメリカ市民権を持つ人が、雇用者による外国人差別を批判したからといって報復処置をとること、求職者がオファーのOKをする前に就労許可の書類を求めたり、I-9フォームの記入を求めること、などがあります。
 

 

 

Q 具体的な状況については、どこへ相談すればいいでしょうか。
 

 

A OSCは、移民法関連の不正雇用の取締り及び防止のために、ホットラインを設けています。


・    求職者または被雇用者用:(800) 255-7688


・    雇用者用:(800) 255-8155


また、移民局サイトのI-9セントラルというI-9情報ページ(www.uscis.gov/i-9central)や、雇用者用情報を含む「M-274. Handbook for Employers, Guidance for Completing I-9」 (www.uscis.gov/files/form/m-274.pdf)もご参照ください。

 
この記事は、参考として一般的な概要をお伝えすることを目的としたものであり、個々のケースに対する法律のアドバイスではありません。

  (2013年7月16日号掲載)

     

 

 

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