Thursday, 21 November 2024

二重国籍配偶者による 永住権の申請 (2014.3.16)

ishinabe top


ishinabe_face.gif石鍋 賢子

米国カリフォルニア州弁護士

上智大学外国語学部英語学科出身。ビジネス系の移民法専門弁護士として20 年の経験を持つ。グレイ・ケリー・ウェア&フリーデンリッチ、ララビー&アソシエーツ等法律事務所勤務を経て、独立し、事務所設立。

米国弁護士会(ABA)、サンディエゴ弁護士会(SDCBA), 米国移民法弁護士会(AILA) 会員。サンディエゴ在住19 年。

 ご質問、ご連絡はこちらまで

 

 

 
 
       
column line
 

 二重国籍配偶者による永住権の申請

       

 

Q 日本在住者です。

 

 

夫は日本人ですが、二重国籍で、アメリカのパスポートも持っています。

 

 

今後、主人の仕事の都合で、アメリカへ移住することになりそうですが、永住権をどうすればよいか教えてください。

 

 

 

 

A 相手の男性が日本在住の方でも、二重国籍によりアメリカ国籍を有するのであれば、ご結婚により、移民法上、あなたはアメリカ人配偶者の妻ということになります。

 

 

日本から永住権の手続きをするのであれば、まずご主人がスポンサーとして、移民請願を提出します。

 

 

これはアメリカ国内移民局のサービスセンターへ、郵送による申請となります。

 

 

現在、請願の審査には約8か月ほどかかっています。

 

 

請願が承認されると、指示に従って書類を提出し、最終的には東京のアメリカ大使館で面接を受け、移民ビザをパスポートに貼付してもらい、その後、渡米という流れになります。

 

 

入国審査では新規移民者用の窓口へ行き、そこで書類をさらに提出し、永住者としてアメリカへ入国することになります。

 

 

グリーンカードは後日、アメリカの自宅へ送付されてきます。

 

 

 

 

 

 

Q 主人はアメリカでの収入がありませんが、大丈夫ですか。

 

 

 

A スポンサーであるご主人が「あなたが政府の生活保護に頼らなくても最低限生活できるだけの経済力を持つ」 というのが条件のひとつです。日本の会社に勤務しているのであれば、その勤務先、年収などを記入してください。

 

 

 

 

 

 

 

Q 主人は今まで日本で生活しているので、アメリカの税金申告書がありませんが、どうすればよいでしょうか。

 

 

 

A アメリカの国籍を持っているのであれば、日本で育ち、日本の会社に勤務して収入を得ている場合でも、アメリカの税務省に申告の義務があります。この義務は、社会人になり収入を得るようになってから、ずっと存在していたのです。

 

 

ただし、特にアメリカ生まれで日本育ちと言う場合、この事実がうっかり見過ごされていることが少なくありません。

 

そのまま日本で暮らし、アメリカとは全く関わりを持たずに過ごすのであれば、それで済んでしまうかもしれません。

 

 

ですが、一般庶民レベルの給与所得者であれば、申告は必要でも追加納税には至らないと思われます。

 

また、意図的ではない未提出に関する罰則は免れるかもしれません。

 

ともあれ、今回はご主人が永住権のスポンサーとして請願申請しますので、アメリカのタックスリターンの提出は必須です。

 

 

 

締め切り後の事後申告となりますが、最低限、昨年分のタックスリターンは作成して提出し、そのコピーを請願に添付することになります。

 

 

 

昨年以前のタックスリターンについては、日米の状況に詳しい会計の専門家にご確認いただくことをお勧めします。

 

 

 

今後すぐにはアメリカへ戻らない場合でも、アメリカ国籍を持つ以上、タックスリターンの申告義務は続きますので、必ず申告を行ってください。

 

 

 

 

Q 現在妊娠していますが、子どもにも米国籍がありますか。

 

 

 

 

A 子どもがアメリカで生まれれば米国籍になり、日本の国籍留保の届けが必要です。

 

 

 

日本で生まれた場合、ご主人が過去最低5年間 (そのうち最低2年間は14歳以降) アメリカに住んでいたのであれば、子どもは父親を通して自然発生的に米国籍となるので、生まれつき日本人でもあり、アメリカ人でもあることになります。

 

 

 

「出生証明書」 に当たるものは大使館を通して発行される、領事による国外出生報告 (Consular Report of Birth Abroad) です。

 

 

 

米国籍の証明にもなります。

 

 

 

もし父親が上記の米国在住期間を満たさなければ、子どもは米国籍にはなりません。

 

 
この記事は、参考として一般的な概要をお伝えすることを目的としたものであり、個々のケースに対する法律のアドバイスではありません。

  (2014年3月16日号掲載)

     

 

 

​