金 一東
日本クリニック・サンディエゴ院長 |
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新型コロナウイルス感染症 (続) (COVID-19) |
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前回、新型コロナ感染症のコラムを書いて以降、新型コロナ感染症を取り巻く状況は劇的に悪化してきています。 3月11日にはWHOがパンデミック (世界的流行) を宣言し、その2日後の3月13日にはトランプ大統領が国家非常事態宣言をしました。 3月19日には、カリフォルニア州で州知事が外出禁止令を全米の州で最初に発令。同日、米国務省は全国民に海外渡航中止の勧告を出しました。 3月20日の段階で、新型コロナ感染者数は全世界で234,000人、死亡数も9,833人に達して、増加の勢いは弱まりそうにありません。 アメリカでも感染者15,219人、死亡者201人と激増しています。 新型コロナ感染の中心は、中国、韓国などのアジアから、イタリア、スペインなどのヨーロッパ諸国とアメリカに移ってきています。 ヨーロッパとアメリカの後は中南米やアフリカに感染の中心が移行していくのでしょうか。 アフリカで新型コロナが流行すると、さらに甚大な被害が予想されます。 いずれにせよ、近年人類が経験したことがない未曾有の様相になってきています。
今後の新型コロナ感染症の動き 暖かくなると新型コロナ感染症の発生は少なくなっていくのではないかという楽観論と、来年以降も続くのではないかという悲観論がありますが、誰もこの新型コロナ感染症がどう実際に終焉していくのか予測ができません。 ただ、何の対策も取らなければ、おびただしい数の人が感染し、亡くなっていくのは確かです。 外出禁止令を発令したカリフォルニア州知事は、今後8週間でカリフォルニア州民の56%、すなわち2,550万人が感染するだろうとの予想を立てました。 感染症の専門家には、12〜18か月続いて40〜70%のアメリカ人が感染し、160〜240万人以上の人が亡くなると推測している専門家もいます。 ただ、これは何の対策もしない場合の推測です。 中国、韓国を見ていると強力な対策の下、2〜3か月くらいで発症数はピークに達し、1日当たりの新たな発生数が減少しています。 ヨーロッパ諸国もアメリカも中国と韓国の2〜3か月後を追いかけるようにして現在増え続けていますが、2〜3か月以内には新たな発生数が減少していくのでしょうか? ただ、それで新型コロナが終焉していくのかについては誰も分かりません。 その後にまた新しい流行が起こる可能性も示唆されています。
新型コロナ感染症の治療薬とワクチンの可能性は? 3月の現時点では、いくつかの薬が新型コロナ感染症の治療薬として期待されています。 中国からの報告では、日本で開発されたインフルエンザ治療薬ファビビラビル (商品名:アビガン) が新型コロナ感染症に効果があるとのことで、現在、臨床試験が行われています。日本でも国立国際医療研究センターなどで試験的に患者さんに使われ始めています。 アビガンは新型インフルエンザの流行のために政府が備蓄している抗ウイルス薬です。 レムデシビルというエボラ出血熱の治療用に開発された抗ウイルス薬の臨床試験も日本で始まるようです。 他に、喘息 (ぜんそく) に使うステロイド薬シクレソニドで症状が改善した、という日本からの報告もあります。 中国、オーストラリア、フランスなどの報告では、マラリア治療薬のクロロキンに効果があるとのことで、現在、いくつかの国で臨床試験が行われています。 このように、いくつかの抗ウイルス薬やその他の薬の臨床試験が行われているので、2〜3か月以内には幅広く治療に使われるのではないかと予想されます。 これらの薬の利点は、すでに他の病気で使われていて、認可を得ている薬なので安全性が確立しているということです。 新型コロナ感染症に対するワクチンは世界中で競うようにして開発されていますが、ワクチンが開発されても、臨床試験をして安全性を確認しないと使えないので、実用化されるにはあと1年以上はかかり、年内実施は困難だと思われます。 また、いろいろな国に供給されるのにはもっと時間がかかることでしょう。
私たちにできること 新型コロナ感染症の対策で一番肝心なのは、感染を広げないということです。 人から人への感染は、その距離が近いほど可能性が高くなります。 そのためにsocial distancingという他の人との距離を2メートル以上とることが勧められているのです。 特に、新型コロナ感染症は症状のない人からでも感染することが分かっているので、このように他の人との間に距離を置くことは重要です。 換気の悪い狭い空間に大勢の人がいると感染しやすいと報告されています。 すでに、コンサートや大きなイベントは中止になっていて、カリフォルニア州では外出も禁止されているので、他の人と空間を共有することはないと思いますが、自宅や職場でも他の人との距離を置くということは重要です。 公共交通機関の利用や旅行を控えます。 特に、クルーズ船による旅行はご法度です。 手洗いは非常に大事です。 感染者の飛沫で新型コロナが眼、鼻、口に付着したり、直接肺に吸入するだけでなく、感染者の咳やくしゃみで飛び散って物の表面に付着したウイルスに触れて、その手で顔を触って感染することがあります。 新型コロナは物の表面で数時間から3日程度生存するのです。 手洗いは、外出後、トイレの後、食べる前、鼻をかんだり咳やくしゃみをした後に、石鹸を使って20秒以上行います。 手洗いができない場合はアルコールを60%以上含む滅菌ハンドジェルで消毒してください。 手洗いをする前に眼、鼻や口に触れないようにします。
他に注意すること 高齢者、糖尿病や心疾患など感染リスクの高い人は自宅にいて他の人とあまり会わないようにします。 また、自宅にいても他の家族や訪問者となるべく会わないようにします。 リスクの高い人への訪問は極力避けます。 身体の調子が悪いときは自宅にいてください。 症状の出る2日前から症状が出て14日間は感染性があると考えられています。 咳やくしゃみをする時はティッシュペーパーや自分の袖を利用して行う咳エチケットを守ってください。 次に、ドアノブ、ハンドレール、エレベーターのボタンなどを触れる時は、ティッシュを使ったり、袖を使います。握手も避けます。 手で触れた場合は後で手洗いをしてください。家の中でも、机、テーブル、ドアノブなどをきれいに消毒をしましょう。 症状のある人との接触は避け、他の人とお皿、コップ、他の食器、タオル、毛布などをシェアしないようにします。 マスクは症状のある人が着用します。 健康な人が普段着用しても感染予防の効果は実証されていません。 感染者の世話をする家族の人はマスクの着用が勧められています。
ドライブスルーによる新型コロナ検査 韓国で始まったドライブスルーによる新型コロナ検査はアメリカでも各地で行われるようになってきました。 早く簡単に検査ができることに焦点が行きがちですが、ドライブスルーでの新型コロナ検査の最大の利点は、検査を受ける人も検査をする人も新型コロナの感染を受けにくいということなのです。 検査を受ける人は、車に乗ったままで、他の人との接触がありません。従って、他の人から新型コロナをうつされたり、またうつすことがありません。 検査をする人は、検査の度にマスクや防御服を脱ぐ必要がありません。マスクや防御服を脱ぐたびに感染の可能性があるからです。 検査自体の精度は70%くらいなので、擬陽性や擬陰性が少なくありません。 陰性だからといって、新型コロナに感染していないと確信できないのです。 また、症状のない人は検査を受ける意義はありません。 症状のない人が受ければ受けるほど、感染はないのに検査が陽性になる擬陽性が増えてくるからです。 少なくとも風邪症状のある人が受けるようにします。 特に、咳、発熱 (38度以上) などです。 呼吸苦があると肺炎の可能性があるのでER (救急室) に行った方がよいですが、その場合は、直接ERに行かないで電話をしてから指示を仰いでください。
◎Scripps Green Hospital のドライブスルー検査場 10666 N. Torrey Pines Rd., La Jolla, CA 92037 月〜金曜:7am – 5pm、土〜日曜:8am – 5pm まず、☎︎ 888-261-8431で予約が必要です。 |
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(2020年4月1日号掲載) |