金 一東
日本クリニック・サンディエゴ院長 |
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新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) |
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昨年12月に中国湖北省の武漢市から始まり、現在世界を席巻している新型コロナウイルス感染症について、米国のCDC (疾病予防センター) とWHO (世界保健機構) の情報に基づいて現時点 (2月17日) で判明していることを解説したいと思います。 2月11日にWHOは新型コロナウイルス感染症をcoronavirus disease 2019=COVID-19 と名付けました。 1月30日に人から人への感染が報告されて以来、世界各地で人から人への感染が確認され、その日WHOは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」 を宣言しました。 2月18日の時点で、世界29か国及び地域で73,332人の感染者が報告され、このうち中国国内の感染者は72,528人います。 死亡者は中国で1,891人、中国以外では3人です。 アメリカでは感染疑いの人は443人いて、347人は検査陰性、15人が陽性、60人は現在検査中で結果待ちです。
コロナウイルスとは 王冠 (コロナ) を被ったような形をしているのでコロナウイルスという名前が付いていますが、風邪や肺炎を起こすウイルスで、風邪の15〜25%の原因になっています。 この風邪の原因となるコロナウイルスは4種類あり、それ以外に肺炎など重症の感染症を起こすコロナウイルスが3種類あります。 過去にあったSARS (重症急性呼吸器症候群)、MERS (中東呼吸器症候群) と今回の新型コロナウイルス感染症を起こす3種類です。 これら合計7種類のコロナウイルスが人間に感染すると知られていますが、それ以外にも、動物には感染していて、まだ人間に感染していないコロナウイルスが何種類かあります。 コロナウイルスは、多くの動物と人間の両方に感染する人畜共通感染症を起こすウイルスで、ラクダ、家畜、猫、こうもりなど多くの動物に感染が認められています。 動物に感染するコロナウイルスが人間にかかり、人間の間で広がるのは稀 (まれ) ですが、これまでにSARS、MERS (中東呼吸症候群) でみられました。SARSはジャコウネコ、MERSはラクダが感染源でした。 今回の新型コロナウイルス感染症も中国、重慶の鮮魚・食用動物を扱う市場から発生した疑いが持たれていますが、現時点では原因となった動物は特定できていません。 ただ、現在は人から人への感染が主な感染経路になっています。
新型コロナウイルス感染経路 新型コロナウイルスは、感染者の咳、くしゃみによる飛沫が他の人の顔、口、鼻、眼などに付着したり、肺に吸い込まれて感染していきます。 咳やくしゃみで飛んだウイルスが物の表面に付着して、他の人が触れて感染する様式も考えられていますが、現時点でははっきり解明されていません。
新型コロナウイルス感染症の症状 感染から発症までの潜伏期間は平均4〜7日で2日から14日までの幅があります。 症状としては、発熱、咳、疲労、倦怠感、息切れなどです。咽頭痛もあります。 他の症状としては、痰 (たん)、頭痛、喀血、下痢。 発熱や呼吸症状の前に胃腸症状を起こす人もいます。 高齢者や糖尿病、心疾患などの慢性疾患のある人は重症化しやすいという報告があります。 風邪症状が始まって1週間くらいして重症化する人が多いようです。 症状の軽い人は1週間くらいして改善するようです。 肺炎で入院する人の約4〜15%が亡くなりますが、軽い症状で済む人や症状の出ない人もいるので、感染者の致死率はそれほど高くないようです。 (中国で3.2%、それ以外で0.4%程度)
新型コロナウイルスの診断と治療 咳、発熱 (華氏100.4度=摂氏38度以上)、呼吸苦などの症状があって、過去2週間以内に中国に行っていたか、新型ウイルス感染者と濃厚な接触があった人は新型コロナウイルスに感染している可能性があります。 新型コロナウイルスに感染している疑いのある人は、まずクリニックや病院に行く前に問い合わせをしてください。 クリニックや病院、検査室ではこの新型コロナウイルスの検査はできません。 治療法もないので、症状が軽い時は、医療機関に行くよりも自宅で療養する方が勧められます。 Remdesivirなどの抗ウイルス薬が試験的に中国で重症患者の治療に使われていますが、効果があるかどうかは、まだ科学的に実証されていません。
新型コロナウイルス感染症の予防 病気の人との接触は避けます。 眼、鼻や口にあまり触れない、身体の調子が悪いときは家にいる、咳やくしゃみをする時はティッシュペーペーにして、すぐにゴミ箱に捨てる、よく触れる物の表面は常にきれいに消毒しておく、などを心がけます。 CDCは健康な人が予防のためにマスクをするのは勧めていません。 マスクは症状のある人が着用し他の人に広がるのを防ぐ方が効果的です。 後は、病気の人を診る医療関係者や感染者の世話をする家族の人が着けるべきです。 従って、アメリカではマスクをしていると感染者だと思われることが多いので気をつけてください。 外出後、トイレに行った後、食べる前、鼻をかんだり咳やくしゃみをした後は、石鹸を使った手洗いを少なくとも20秒行います。 石鹸で手を洗うことができなければ、アルコールを60%以上含んだ消毒液で消毒してください。洗っていない手で眼、鼻や口を触れないようにします。
2週間以内に中国から帰ってきた人 2週間以内に中国から帰ってきて咳や発熱のある人は、医師やERを受診する前に、電話で相談してアドバイスを得てください。 他人や家族との接触を避け、症状のある間は外出しないで、咳エチケット (咳やくしゃみをする時はティッシュペーパーを使用するか、腕や袖でカバーしてください) を守ってください。 手は石鹸でよく洗ってください。
アメリカ入国の制限と隔離 現在、アメリカ人市民と永住権保持者の外国人以外で、14日以内に中国を訪問した人は、アメリカに入国することはできません。 アメリカ市民または永住権保持者の外国人で14日以内に中国を訪問した人は、アメリカには入国できますが、11の空港で健康チェックを受けることになっています。 健康状態や中国訪問の内容によって、中国から離れた時から14日間は行動が制限されることがあります。 湖北省を14日以内に訪問したことがある人で発熱、咳、呼吸苦のある人は、11の空港でCDCの職員によって評価され、医療機関に運ばれます。 症状のない人は、国、州または地元の隔離施設で中国を離れて14日になるまで隔離されます。 湖北省以外の中国を訪問した人でも、発熱、咳、呼吸苦のある人は、11の空港でCDCの職員によって評価され、医療機関に運ばれます。 湖南省以外の中国を訪問した人で症状のない人は、アメリカの最終目的地まで移動することができますが、最終目的地に到着後は、なるべく家に滞在し、他人との接触を中国を離れてから14日間は避けます。 そして健康状態をモニターします。 その後、州や地元の保健所がその後の状態を知るために本人に連絡をすることになっています。 |
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(2020年3月1日号掲載) |