H-3ビザ (2012.6.16)

yoshihara_face.jpg吉原 今日子

米国カリフォルニア州弁護士

USDにて経営学修士(MBA)を取得。
その後、法学博士(JD)を取得。

会社の経営、組織体系、人材の重要性を常に念頭に置いた法的アドバイスを行います。カリフォルニア州弁護士会、米国移民法弁護士会所属。

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H-3ビザ

Q. 日本でグラフィックデザインの仕事をしており、米国にて2~3年仕事をしたいと思います。

私は、4年制大学を卒業していないので、 「H-1B」ビザを申請する資格はないのですが、 「J-1」ビザでの1年半の滞在では短過ぎます。

「H-3」ビザというものがあると聞きましたが、私は申請することができるのでしょうか?
 

 

A.  H-3ビザは、米国においての研修を目的としたビザです。

H-3ビザ取得は以前に比べて極めて厳しくなっていますので、申請するか否かを決める際、取得のための条件を十分に吟味する必要があります。

申請は、米国にある雇用主によって移民局を通して行われます。

H-3ビザは、H-1B (専門職) ビザのように、学士号、あるいはそれと同等の経験を保持していることを証明する必要はありません。

ただし、このH-3ビザの申請において、雇用主は次のことを証明しなければなりません。
 

  1. 米国での研修が母国では得られないということ (言い換えると、日本にはない技術の修得であること) 
  2. 研修を受けた者にとって、米国内で受けた研修が、研修後に米国外において、その職種を遂行するのに役立つものであること  
  3. 研修生を雇うことが、米国人労働者にとって代わるものではないこと  
  4. 研修はあくまでも研修生をトレー ニングするものであり、生産性を伴うものではないということ

また、研修プログラムが既に確立されたものであることを示す必要があります。

また、 研修の構成、 詳細、 期間、報酬、そして。なぜその研修が母国ではなく米国内で行わなければならないかということも、明確にする必要があります。

これは、建築分野で、ハンディキャップの人のためのスロープやエレベーターのデザインなど、日本の建築では見られず、従って日本では学べない内容を修得するプログラムなどが典型的な例として挙げられます。

そして、① 研修を受ける者が、既にその研修分野において十分な知識を有していると、移民局が判断した場合、 ② 研修で身に付けた知識や技術が、米国外において不必要であると判断された場合、③ 研修後に雇用主が、研修生を米国内にて雇う目的で研修を行うと判断された場合、④ その研修が、単に米国での滞在期間を延長する目的であると判断された場合には、H-3ビザの申請は却下されます。
 

 

 

研修内容と条件を申請前によく確認すべき

具体的には、以下のような内容を子細に問われることがしばしばあります。
 

  • トレーニングの種類、およびどのような形で監督が行われるのか。またトレーニングプログラムの構成
  • トレーニングプログラムの時間配分、および生産性のある労働に従事する時間
  • クラスルームにおいてトレーニングを受ける具体的な時間数、および実際の職場においてトレーニングを受ける具体的な時間数
  • トレーニングを受けるにあたって、 母国において準備してきた内容
  • トレーニングが母国で受けられない理由、およびそれを米国内で受けなければならない理由
  • トレーニングを受ける者が受け取る報酬、および会社がトレーニングを行うことによって得られる利益の説明

 

なお、トレーニングの内容が以下のような場合は、申請却下の対象となります。
 

  • トレーニングのスケジュールが一般的であり、目的や評価の手段が備わっていない  
  • トレーニング内容が、トレーニングを行う会社と関連性が薄い  
  • トレーニングを受ける者が、既に修得しているとみられる技術のためのトレーニング  
  • トレーニングの内容が、将来的にその会社における雇用を見込んでいると考えられる  
  • トレーニングを行うに十分な施設、 監督者等が存在しないような場合  
  • プラクティカルトレーニングの期間延長のために行われているとみられる

 

H-3ビザは最高で2年まで取得することができ、ビザ保持者の配偶者、 および21歳未満の子供はH-4ビザを取得し、米国に滞在することができます。

あなたの場合、最も重要なことは、スポンサー企業でのトレーニング内容が、日本では学ぶことができないものであることを証明することです。

トレーニングの内容を前記の条件と照ら し合わせ、よく吟味してから申請することをおすすめします。

 

この記事は、参考として一般的な概要をお伝えすることを目的としたものです。各ケースのアドバイスは必ず弁護士及び専門機関にご相談下さい。

(2012年6月16日号掲載)

 

 

 

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