H-1、E-1の可能性 (2013.2.16)

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吉原 今日子

yoshihara face米国カリフォルニア州弁護士

USDにて経営学修士(MBA)を取得。
その後、法学博士(JD)を取得。

会社の経営、組織体系、人材の重要性を常に念頭に置いた法的アドバイスを行います。カリフォルニア州弁護士会、米国移民法弁護士会所属。

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H-1、E-1の可能性
       

Q 大学院で経営学を学びました。

大学卒業後、現在OPTで日系企業に勤めています。

H-1Bの申請を希望しているのですが、今年はH-1Bビザの申請が抽選になるかもしれないと聞きました。

もし抽選にもれた場合、日系企業なので、E-1ステータスに切り替得ることも可能だと思います。

日本のアメリカ大使館で面接を受け、E-1ビザスタンプの取得をしようと考えています。

しかし、E-1ビザは取得が非常に厳しくなっていて、面接で落とされる人も多いと聞いています。どうしたらいいでしょうか?
 

 

A 2014年度枠 (2012年10月1日から2013年9月30日) のH-1B申請が2013年4月1日から開始されます。

移民局がその1年間 (2012年10月1日から2013年9月30日) に発給できるH-1Bビザの数は、一般枠が65,000です。

また、修士号枠 (アメリカで修士号、あるいはそれ以上の学位を取得した人に与えられている枠) は20,000です。

2013年度は2012年6月に年間発行数に達してしまいました。

これは例年に比べて6か月も早く枠がなくなったことになります。

今年は4月の、しかも早い時点で、年間発行数に到達する可能性が非常に高いと考えられます。

もし、早い段階でのビザが締め切られた場合、抽選になることも考えられます。

抽選にもれた場合の申請についても考えておかれた方がいいと思います。

日本のアメリカ大使館・領事館でのEビザ (E-1:駐在員ビザ、E-2:投資家ビザ) 審査は他のビザ (H-1B、L-1) と違い、その認可・却下の判断は、すべて大使館・領事館の判断に任されています。

E-1ビザ申請に際してのスポンサー側の条件は、スポンサー企業の株式の50%以上を日本人あるいは日本の会社が所有していること、及びその会社が日本との間で貿易業務を行っていることです。

また、申請者はスポンサー会社の管理職、あるいは特殊技能保持者であることが要求されます。

この管理職では、単に申請者の下に部下がいるだけでなく、その部下の下に、さらに部下が存在することが要求されます。

言い換えると、申請者が 「部下を持つ部下を持っている」 こと、申請者を頂点としてその部署の組織を示すピラミッドを描いた時に、申請者の下に最低2段の組織構造が存在していないといけないということです。

これは面接の際、会社の組織表を提示して証明することになります。

最近、在日アメリカ大使館・領事館では、特にこの条件が強く要求され、これが却下の判断が下される主な理由となっています。

また、管理職であることに関して、在日アメリカ大使館・領事館は、申請者の学歴・職歴を考慮し、申請者が管理職としてふさわしいバックグラウンドを保持しているかどうかも重要な判断材料にします。

例えば、短大を卒業したのみで職歴も短い場合は、却下の可能性が高いと言えます。

また、職歴に関しても、スポンサーの業種と類似した分野においての経験であるか否かも考慮の対象となる時があります。

従って、あなたの場合、OPTを取得する前に取得した学位が Associate なのか、Bachelor、Master なのか、あるいは Doctor なのかによって、大きな違いが出ることになります。

特にあなたの場合 (Master以上を取得していれば別ですが) は、OPT終了後1年も経過していないため、職歴が短か過ぎると判断される危険性があります。ですから、申請には十分注意されることをお勧めします。

申請を急いだ結果、ビザ申請そのものが却下されてしまうだけでなく、あなたがせっかく努力を積み上げて確保した今の仕事、アメリカでの生活を失ってしまう危険性もあります。

あなたの場合、もし前記の条件を十分に満たしておらず、なおかつ今夏に一時帰国することにさほどの重要性がないのであれば、H-1Bビザへの切り替え (もちろん、この場合、抽選漏れのリスクがあります)、あるいは今の会社を通してグリーンカードの申請を開始し、一時渡航許可証 (Advance Parole) が取得できてから一時帰国する方が、前記の危険性を回避することができ、安全だと言えます。

この一時渡航許可証は、グリーンカードを取得できるまでの長い期間を待つことなく、それ以前の手続過程において発行されます。

また、一時渡航許可証にて出入国する場合は、在日アメリカ大使館・領事館にてビザ申請を行い、面接を受ける必要はありません。

あなたの場合、もし前記の条件を十分に満たしておらず、一時帰国することにさほどの重要性がないのであれば、E-1へのアメリカ国内でのステータス変更を行い、H-1Bの再度申請ができる時まで待つことをお勧めします。

あるいは今の会社を通してグリーンカードの申請を開始し、一時渡航許可証 (Advance Parole) が取得できてから一時帰国する方が、前記の危険性を回避でき、安全だと言えます。

この一時渡航許可証は、グリーンカードを取得できるまでの長い期間を待つことなく、それ以前の手続過程において発行されます。

また、一時渡航許可証にて出入国する場合は、在日アメリカ大使館・領事館にてビザ申請を行い、面接を受ける必要はありません。

 

この記事は、参考として一般的な概要をお伝えすることを目的としたものです。各ケースのアドバイスは必ず弁護士及び専門機関にご相談下さい。

(2013年2月16日号掲載)

     

 

 

 

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