永住権申請中の転職 (2014.12.16)

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吉原 今日子

yoshihara face米国カリフォルニア州弁護士

USDにて経営学修士(MBA)を取得。
その後、法学博士(JD)を取得。

会社の経営、組織体系、人材の重要性を常に念頭に置いた法的アドバイスを行います。カリフォルニア州弁護士会、米国移民法弁護士会所属。

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 永住権申請中の転職

       

私はコンピュータサイエンス専攻で大学を卒業してから、現在、コンピュータソフトの会社で働いています。

今の会社でグリーンカード申請をサポートしてもらっています。

実は、この会社をできるだけ早く辞めたいと思っているので、転職活動中です。

その場合、グリーンカードのスポンサーを替えなければならないと思いますが、可能でしょうか。

もし難しいようでしたら、グリーンカードが取れてから辞めようかと思っています。

すぐに退職してしまってもいいのでしょうか?

 

 

グリーンカードのスポンサーを替えることはどの段階でも可能ですが、あなたのグリーンカード申請のプロセスによって、申請を初めからやり直さなければならない場合があります。

しかし、今あなたが働いている会社を辞めたとしても、グリーンカードが取れた段階で、また再採用するということであれば、どの段階にいてもグリーンカードの申請を初めから繰り返す必要はありません。

グリーンカードが取れたら今の会社が雇ってくれるのであれば、会社を辞めても、グリーンカードのスポンサーを変更する必要はありません。

というのは、現在の雇用主とグリーンカードのスポンサーが一致する必要がないからです。

雇用を通してのグリーンカード申請の場合、大きく分けて3つのステップがあります。

第1ステップは Labor Certification (労働局の審査 =PERMと呼ばれるもの) です。

ここでは、アメリカ国内にあなたの希望する職務に就くアメリカ人がいないことを証明する審査です。

第2ステップ (I-140) では、スポンサーである会社が労働局で定められたお給料をあなたに払うことができるかどうかという審査です。

最後に、第3ステップ (I-4850)として、申請者自身が条件を満たしているかの審査が行われます。

もしあなたが、現在第1ステップ、または第2ステップの申請段階にいて、グリーンカード取得後も採用される約束がなく、解雇される場合、第1ステップから申請をやり直すことになります。

しかし、第2ステップの認可が取れていれば、第1ステップからやり直しても、一度目の永住権申請の Priority Date を取り戻すことができます。

第1ステップからやり直すことなく、Priority Date を維持したままでグリーンカードのスポンサーを変更するには3つの要素が絶対条件となります。

① 第2ステップでのI-140が認可済みであること。

② 第3ステップのI-485を申請してから180日が経過していること。

③ 変更先の職種が申請中の永住権の職務内容と類似していること。

 

以上の条件を満たした上で、グリーンカードスポンサーを替えたいときに必要にとなるものは、新しいグリーンカードスポンサーからの移民局宛ての手紙です。

その手紙には、新しい会社でのあなたの職務内容が、第1、第2で申請したときと類似しているものであるという主張をしていなければなりません。

職務内容が類似しているという点で、労働局からすでに設定された給料と新しいスポンサーでの給料が大幅に違わないことも、審査上での重要な要素となります。

また、180日経過しているということが重要になります。

180日未満での申請の場合、現在のグリーンカードスポンサーが移民局に申請の取り下げを行ってしまうと、グリーンカード申請を初めからやり直さなければなりません。

グリーンカードを雇用ベースで申請する人は、グリーンカード取得後も永久的にそこで働く意志を持っている必要があります。

ですから、グリーンカード取得後、すぐに会社を辞めてしまうと、グリーンカードを剥 (はく) 奪されてしまう可能性もあります。

これは、ほとんどの場合、スポンサー会社がグリーンカード取得後にすぐ辞めてしまった従業員に対し、移民局にグリーンカードの取り下げを願い出た場合です。

もしかしたら、最低1年間働く必要があると耳にしたことがあるかもしれません。

これは、以前の判例で、グリーンカードを取得して1年間勤めた後、会社を辞めた社員のグリーンカードの取り下げを移民局に申し出たところ、1年以上会社に勤めていたということを考慮し、移民局は取り下げの申し出をを却下したことに基づいています。

しかし、グリーンカードを所有して1年経っているからといって、必ずしも取り下げられないという保証があるわけではありません。

もちろん、解雇されたり、病気になったり、セクハラ行為をされたなど、仕事を続けられなくなる想定外の状況が生じることがあります。

また、現在の仕事より高額なオファーが別の会社からあった場合、常識的に考えて、それを断ることはないと思います。

このように様々な理由が生じてきますので、一概に、どのような状況でリスクがなくなるかを断定することはできません。

しかし、会社変更をした場合、あなたは「グリーンカード申請時点では永久的に勤める意志があったが、その後、状況が変わった」と、申請時には会社を辞める予定がなかったことを主張しなければなりません。

あなたの場合、第2ステップのI-140が認可済みで、第3ステップのI-485を申請してから180日が経過していれば、グリーンカードスポンサー変更は可能です。

そうでない場合は、新しい会社でグリーンカード申請を初めからやり直してもらうか、グリーンカード取得後に再雇用の約束をしてもらうか、あるいはグリーンカードを取得してから辞められた方が賢明と思われます。

 

この記事は、参考として一般的な概要をお伝えすることを目的としたものです。各ケースのアドバイスは必ず弁護士及び専門機関にご相談下さい。

(2014年12月16日号掲載)

     

 

 

 

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