若年性認知症の漢方療法(2014.11.1)

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son_new8.jpg曽 碧光

米国中医薬研究所所長

1932年台湾に生まれる。
東京大学農芸化学修士、米国カンサス大学微生物学修士、東京大学薬学博士、 元米国コネチカット大学病理学助教授、
第1 回世界中西医結合大会審査委員、セント・エリザベス病院 (ボストン) 筋ジストロフィー主任研究員、ドライ・アイ眼科研究所生化学顧問、元米国漢方研究所所長、現米国中医薬研究所所長。


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若年性認知症の漢方療法
       

Q : 先月号に若年性認知症の予防について述べていましたが、若年性認知症の漢方療法がありましたら、お教えください。

 

 
A : 先月号で述べた通り、一般に言われているアルツハイマー型認知症は65歳以上になってから発症するのに対して、若年性認知症は65歳未満に発症するアルツハイマー病です。


 若年性認知症は圧倒的に脳血管性認知症が多いので、脳血管性認知症の漢方治療報告を調べてみると、釣藤散と黄連解毒湯が有効と示されています。


 139人の脳血管性認知症患者を対象にした臨床試験で、釣藤散を服用した患者は服用しなかった患者に比べて、はるかに大きな改善が見られたと報告されています(J. Trad. Med. 15 14-21, 1998)。

また、釣藤散はアルツハイマー型認知症にも有効であるという研究報告があります(Pharma Medicine 6, supple, 80-86, 1988)。


 東北大学医学部神経内科の小暮久也教授は、脳血管障害後遺症としての認知症患者 (11例) とアルツハイマー型認知症患者 (9例) の20例に黄連解毒湯1日7.5gを8週間以上連続して経口投与した結果、症状改善が認められ、長谷川式簡易知能スケールでも改善が認められたと報じました。

小暮教授らは黄連解毒湯の認知症に対する効果は脳血流を増加させ、特に記憶と関係が深い海馬領域の血液増加によるものと科学的に確認しました。

東海大学医学部の荒木五郎教授も、黄連解毒湯は脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症の症状改善に効果があると報告しています。


 従って、若年性認知症の治療に釣藤散と黄連解毒湯を併用して両漢方の相乗効果で治療効果をさらに上げることも期待できます。


 また、釣藤散と黄連解毒湯には脳血流を良くする効果があるので、一般の認知症と物忘れ防止にも役立つはずです。

 













 
(2014年11月1日号掲載)      

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