永野 文久
米国公認会計士 昭和17 年生まれ。 昭和41 年東京大学卒。同年三和銀行入社。
ご質問、ご連絡はこちらまで昭和58 年米国公認会計士。 |
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米国の退職給付制度の概要 (2) |
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アメリカにおける退職給付制度への関心が年々高まっています。 日本と同様、政府の財政再建および経済の見通しが利かず、退職後のライフを心配する米国民が増えているからです。 アメリカの退職給付制度は、公的年金である Social Security、私的年金である個人年金 (IRA) 及び企業年金(Qualified Plan)に大きく分けられます。 Social Securityには原則として全員が加入することになっていますが、給付水準が必ずしも十分とはいえず、さらに年金財政への不安を抱く人も多いのが現状です。 このため、私的年金プランも様々なものが税制上の優遇措置を伴って設定されています。 今回は前回に引き続き、アメリカの年金制度とその税制上の扱いについて概説したいと思います。
拠出期間 Traditional IRA、Roth IRAとも、拠出期間はその年の1月1日から翌年の4月15日 (土・日と重なる場合は次の月曜) までです。 従って、2013年の拠出期間は2013年1月1日から2014年4月15日となります。
Qualified Plan (適格退職給付制度) ① 定義とプラン例 Qualified Planとは、IRC (the Internal Revenue Code − 内国歳入法)、DOL (the Department of Labor − 労働省) 及びERISA (the Employee Retirement Income Security Act − 被用者退職所得保障法) の要件を満たした企業退職給付制度であり、一定の税務上の特典が付与されます。 Qualified Plan には確定給付型 (雇用者が一定の給付水準を約束するもの) と確定拠出型 (雇用者が一定の拠出を約束するもの) がありますが、確定給付型の年金プランは減少しつつあり、確定拠出型が主流になっています。 確定拠出型プランには各種の形態がありますが、例を挙げると以下のようなものがあります。 1) 401 (k): 雇用者と従業員双方が基金に拠出することを前提としたプラン。従業員は所得税の計算上、拠出分を所得控除できる。 2) SIMPLE (Savings Incentive Match Plans for Employees) IRA: 従業員が100名未満の中小企業用のプランで雇用主がSIMPLE用に設定したTraditional IRA (SIMPLE-IRA) に拠出するプラン。雇用主には一定額の拠出が義務づけられ、また、従業員からの所得控除の対象となる拠出が認められる。 3) SEP (Simplified Employee Pension): 雇用主がSEP用に設定した自身または従業員の Traditional IRA (SEP-IRA) に拠出するプラン。従業員からの所得控除の対象となる拠出は認められない。実際には従業員がいない企業主に利用されることが多い。 4) ESOP (Employee Stock Ownership Plan): 雇用者が自社の株式を基金に拠出するプラン。
② 401 (k) の概要 確定拠出型の典型で、日本でもよく話題になる401 (k) の制度概要は以下のようになります。 まず、401 (k) プランへの拠出金は、上述したように税引前の所得額から差し引かれるため、非課税のまま拠出されます。 自己の拠出分、雇用主負担分及び運用益に対する課税は401 (k) プランから金額が引き出された時点で初めて行われます。 従業員の年間拠出限度額は$17,500 (2013年)であり、50歳以上の加入者はさらに$5,500まで追加拠出できます。 但し、雇用者と加入者の拠出金を合わせた場合に$51,000または年間給与額を超えるような拠出はできません。 401 (k) は確定拠出型退職給付制度であり、拠出金を全体として管理するため一般的に信託 (trust) は設定されますが、その中で従業員個々人のアカウントが設定され、各人に帰属する金額が厳密に管理されています。 プラン加入者自身が自身に属する資金の投資先を信託先が準備した各種の選択肢から選択します。 運用状況を見ながら投資先の変更などを判断するので、退職給付金額はプラン加入者の投資判断によって変化します。 なお、401 (k) にはロールオーバーと呼ばれる口座の移し替えが認められており、この場合には引き出しとは見なされません。 このため、プラン加入者が転職した場合、次の雇用先の 401 (k) プランや IRA などに無税で移行できるため、継続して投資が可能です。 以上のように、アメリカの退職給付制度はかなり複雑であり、アメリカの退職給付制度に加入されている方には一度、どのような給付の受給資格がいつ頃発生するのか、また、将来の給付は各種プランを合わせるといくらになるのかシミュレーションしてみることをお勧めします。
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※注意:このコラムは米国での税務に関する一般論的概説ですので、実際の案件については個別に専門家の意見を求められるようにお願いします。 | ||
(2013年12月1日号掲載) |