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nagano_face.jpg 永野 文久

米国公認会計士

昭和17 年生まれ。  昭和41 年東京大学卒。同年三和銀行入社。
昭和58 年米国公認会計士。

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「財政の崖(Fiscal Cliff)」の回避法と税務上のポイント (その1)

オバマ大統領は1月2日、減税失効と強制的な歳出削減によるダブルパンチ、「財政の崖」の回避に向けた法案に署名しました。

すでに米議会の上下両院は1月1日に法案を可決しています。

この法案により、年収$450,000を下回る世帯を対象に所得税などの減税が恒久化されます。

また、財政再建を目的に法制化され1月2日に始まる予定だった強制的な歳出削減は、開始が2か月遅れることになりました。

さらには失業保険給付を1年間延長することなども決まりました。

今回は、この土壇場で回避された 「財政の崖」 について、法案の可決までの経緯と、その税務上の影響を考察したいと思います。

 

 

回避法案可決までの経緯

昨年12月末までもつれ込んだ財政の崖回避のための回避法案合意に向け、オバマ大統領は12月27日、休暇先のハワイからワシントンに戻り、議会との協議を再開しました。

そして12月28日、ホワイトハウスにて野党共和党のベイナー下院議長、与党民主党のリード上院院内総務と会談、行き詰った状況を打開するため、議会で回避案をまとめるよう改めて要請しました。

これを受けて、議会上院の与野党幹部にバイデン副大統領も加わり、回避案の合意に向け協議が続けられましたが、増税対象となる富裕層の年収などをめぐり、民主党・共和党双方の折り合いはつかず、12月30日の協議は見送られました。

その後、期限最終日となる12月31日の夜を迎え、議会上院の与野党幹部とバイデン副大統領が回避案の合意に達しました。

議会上院 (Senate) は年が明けた1月1日午前1時すぎにようやく賛成89票、反対8票の賛成多数で法案を可決しました。

法案はその後、議会下院 (House of Representatives) に送られましたが、下院で多数を占める野党共和党の保守派議員が、上院の超党派法案は歳出削減が十分でないと反発し、修正法案の提出に動きましたが、可決に必要な票数が得られないと判断、上院が可決した超党派法案の採決を受け入れました。

そして1月1日深夜に下院で採決が行われ、賛成257票、反対167票の賛成多数で法案は可決されました。

以上のように、アメリカは1日だけ 「財政の崖」 から転落した形となりました。

可決された法案は遡及 (そきゅう) して適用されると規定しているため、遅れによる悪影響はほとんどありません。

そして1月2日のニューヨーク株式市場は、財政の崖による景気への打撃が回避されたことを好感し、ダウ平均株価は昨年末の終値を$300以上超える大幅な値上がりとなり、今年最初の取引を終えました。

 

 

成立した合意の主なポイント

A. 個人所得税

①所得税率

今回の合意では、中間所得層に対する減税を恒久化し、現行累進税率 (10%、15%、25%、28%、33%、35%) を維持、新たに最高税率の39.6%が夫婦合算申告者の$450,000以上 (夫婦別申告者の場合は$225,000以上)、独身の$400,000以上、特定世帯主 (head of household) の$425,000以上の所得に課されることとなった。当初オバマ政権は、夫婦合算申告者で$250,000以上としていたので、年末の共和党との交渉過程で$200,000程度となる金額が増加したことになる。

 

②人的控除 (personal exemption) と項目別控除 (itemized deduction)

いわゆるブッシュ減税とその後の時限立法により、停止されていた人的控除 (日本の基礎控除、扶養控除等に相当) と項目別控除の逓減 (phase-out) が2013年より復活し、夫婦合算申告$300,000以上 (夫婦別申告は$150,000以上)、独身$250,000以上、特定世帯主$275,000以上の納税者に対し、所得に応じて人的控除と項目別控除が段階的に減額される。

 

③長期キャピタルゲインと適格配当所得の税率

長期キャピタルゲインと一定の条件を満たした適格配当所得の税率は通常所得の金額が39.6%のタックスブラケット (所得区分) に入っている納税者は20%となり、さらに Medicare contribution tax  3.8%が加算され23.8%となる (Medicare contribution taxについては前月号を参照されたい)。通常所得のタックスブラケットが中間層の納税者の税率は15% (あるいは18.8%)、タックスブラケットが 10%と15%の納税者は0%となる。

 

(次号に続く)


※注意:このコラムは米国での税務に関する一般論的概説ですので、実際の案件については個別に専門家の意見を求められるようにお願いします。
(2013年2月1日号掲載)

 

 

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