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nagano_face.jpg 永野 文久

米国公認会計士

昭和17 年生まれ。  昭和41 年東京大学卒。同年三和銀行入社。
昭和58 年米国公認会計士。

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海外資産申告の未提出者に対する新しい法令遵守制度

米国政府は、海外に資産を置く申告者に対して情報開示を厳しく追及しています。

9月1日から、米国歳入庁 (IRS) は非居住米国納税者向けの新しい簡便法申告手続き (New Streamlined Filing Compliance Procedures) を発効しました。

これは、海外居住の米国納税者 (アメリカ市民及び永住権者等) の中に、適時に連邦所得税申告書 (Federal income tax return) や海外預金口座報告書 (Reports of Foreign Bank and Financial Accounts) の提出を忘れたか、そもそも知らなかった等の「軽度の違反者」に対して法令遵守を促進するための制度です。今回は、この簡便法申告手続きについて概観してみます。

 

 

海外預金口座報告書(FBAR)

まず、海外預金口座報告書 (Reports of Foreign Bank and Financial Accounts "FBAR", Form TD F 90-22.1 www.irs.gov/pub/irs-pdf/f90221.pdf) とは、アメリカ市民及び居住者等が、前暦年に$10,000超の海外金融資産を保有した場合、翌年6月30日までに財務省に報告する制度です。

故意の違反の場合は、$100,000または海外金融資産の50%のどちらか大きい金額、故意でなくとも正当な理由がない場合は、$10,000を上限とするのペナルティが課されます。

 

 

簡便法手続きの内容

今回導入された簡便法手続きは、上記のFBARに関連し、軽度のコンプライアンス違反者向けに設計された制度です。

FBARの制度を最近知り、法令遵守したいという申告書に対する制度です。

提出された書類は全て審査されますが、審査の程度は、コンプライアンス違反の度合いに応じて様々です。

軽度のコンプライアンス違反については迅速に処理され、一般的に罰則や追加措置は伴いませんが、違反に重大性が認められる場合、この簡便法手続きでは処理されず、より徹底した審査や本格的な税務調査が実施されることになります。

この簡便法手続きを利用する納税者は、適切な関連情報を含む過去3年度分の遅延税務申告書 (Delinquent tax returns) と過去6年分の遅延海外預金口座報告書 (Delinquent FBAR, Form TD F 90-22.1) を提出することが求められます。

発生した税金と遅延利息の支払いは遅延税務申告書の提出時に行います。

 

 

簡便法手続きの申請適格者

この簡便法手続きにおいて、申請適格書の要件は、2009年1月1日以降、米国外に居住し、且つ同期間、税務申告していない米国納税者 (アメリカ市民及び永住権者等) で、コンプライアンス違反のレベルが軽度であることが求められます。

この制度を通じて修正申告書を提出する場合は、一部の例外を除いて、リスクが高いものと扱われ、税務調査の対象となり得ます。

つまり、納税者が以前報告したか、未申告の所得額や控除額、税額控除額、税額などを訂正するために修正申告書を提出する場合、この簡便法手続きは利用できません。

 

 

コンプライアンス・リスクの決定

米国歳入庁 (IRS) は、納税者より提出された税務申告書や質問書などの追加情報に基づいてコンプライアンス違反の重要度を決定します。

一般的に、重要性がなく、税額が$1,500未満の税務申告書はリスクが低いものと扱われ、簡便法手続きが適用されます。

コンプライアンス違反のリスクは、以下の状況において高まるとされています。

・    この制度を通して提出された申告書のいずれかに、還付請求がある場合
・    米国内において重要な経済活動が行われている場合
・    納税者の居住国ですべての所得を申告していない場合
・    納税者が米国歳入庁 (IRS) の調査を受けている場合
・    以前、納税者に FBAR の罰則が科されたことがあるか、警告の通知を受領したことがある場合
・    納税者がその居住国外に所在する金融口座の持分や権限を保有している場合
・    納税者がその居住国外に所在する企業体の持分 (株式等) を保有している場合
・    米国源泉所得がある場合
・    洗練されたタックス・プランニングや租税回避の兆候がみられる場合

 

今後、こうした新しい制度が導入されたことに鑑 (かんが) み、日本など海外に資産を置く米国居住者は、FBARの申告や、申告をできなかった場合の簡便法手続きの対応について、十分に注意を払って対応してほしいと思います。


※注意:このコラムは米国での税務に関する一般論的概説ですので、実際の案件については個別に専門家の意見を求められるようにお願いします。
(2012年12月1日号掲載)

 

 

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