曽 碧光
米国中医薬研究所所長
1932年台湾に生まれる。
東京大学農芸化学修士、米国カンサス大学微生物学修士、東京大学薬学博士、 元米国コネチカット大学病理学助教授、第1 回世界中西医結合大会審査委員、セント・エリザベス病院 (ボストン) 筋ジストロフィー主任研究員、ドライ・アイ眼科研究所生化学顧問、元米国漢方研究所所長、現米国中医薬研究所所長。
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前立腺がんのPSAテストは定期的にする必要がない |
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Q : 米国予防医療特別委員会と米国家庭医学会が前立腺がんのPSAテストは利益よりも害が多いので、テストを定期的に受ける必要がないと声明していますが、その理由をお教えください。 また、前立腺がん予防の漢方もお教えください。
A : PSAテストの欠点は次の通りです。
① 前立腺がん患者と正常な人を見分ける正確度が19%しかない。それはPSAテストが単なる炎症テストのようなものであるため、がんだけでなく、前立腺肥大、細菌感染症、馬や自転車に乗った後、またはセックスをした後でもPSA値が上がるからです。
② 生殖の早い悪質な前立腺がんと、放っておいても命にかかわることがない生殖の遅い前立腺の病気とを区別できないことです。
③ 米国の研究では、約24万人の男性を調査した結果、PSAテストによる前立腺がんの死亡率の減少は認められませんでした。
その反面、PSAテストの弊害として、その信憑性があまりにも低いので、前立腺がんであるかどうかを確認するために、生体組織検査(biopsy=バイオプシー)を受けなければなりません。バイオプシーはかなり苦痛を伴う検査であると同時に、発熱を起こしたり、細菌感染を起こしたりして入院するケースも多く、暫時的ですが排尿に問題が起ることもあります。
PSA値が高い70名の人に前立腺がんが確認されず、一方で、PSA値が正常であった30%の人たちに前立腺がんが認められたと、米国がん学会が報告しています。
PSAテストによる誤診は、人々にがんに対する憂慮感を植え付け、必要もない前立腺の手術、放射線と化学治療ならびにホルモン治療を施した結果、インポテンスや尿失禁など、体に悪影響を与えます。
前立腺がん予防の漢方として、猪苓湯と八味丸の併用が広く使われています。
猪苓湯と八味丸は前立腺肥大症治療にも広く使われており、猪苓湯構成生薬の猪苓と茯苓に抗がん成分があることが証明されています(Carbohydrate Res. 69, 165, 1979)。
また、猪苓湯は膀胱がん予防にも優れた効果があると報じられています(J. Med. Pharm. Soc. WAKAN-YAKU, 8, 200-202, 1991)。
八味丸構成生薬の地黄、茯苓、山薬にも抗がん作用があることが確認されています(J. Med. Pharm. Soc. WAKAN-YAKU, 8, 29-33, 1991)。
これらの生薬の抗がん効果に加えて、猪苓湯と八味丸に免疫増強効果があることが報告されています。
免疫増強効果と抗がん作用を兼ね備えた猪苓湯と八味丸を併用すれば、前立腺がんを予防できるはずです。
実際に放射線治療を受けたがん患者が、この両漢方の服用によって再発を防いだ例が多々あります。
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(2014年5月1日号掲載) |
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