曽 碧光
米国中医薬研究所所長
1932年台湾に生まれる。
東京大学農芸化学修士、米国カンサス大学微生物学修士、東京大学薬学博士、 元米国コネチカット大学病理学助教授、第1 回世界中西医結合大会審査委員、セント・エリザベス病院 (ボストン) 筋ジストロフィー主任研究員、ドライ・アイ眼科研究所生化学顧問、元米国漢方研究所所長、現米国中医薬研究所所長。
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トランス脂肪とハートアタック |
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Q : 2013年11月7日に、米国食品医薬局(FDA)がすべての食品からハートアタックと脳卒中の原因になるトランス脂肪(trans fat)を取り除くと提案しました。 医療関係者も大賛成していますが、トランス脂肪とはどういう脂肪でしょうか。 心臓疾患との関連性も説明してください。また、脂肪を下げて心臓疾患を予防する漢方もお教えください。
A : トランス脂肪は動物のミルクや肉に含まれている成分ですが、1901年にドイツの科学者ウィルヘルム・ノーマンが植物油を人工的に水素添加してラードやバターなどの自然食品より安価な代用食品を作りました。
その代表的な生産品にマーガリンがあります。私たちが日常使っているクッキー、ポップコーン、シリアル、ケーキミックス、ビスケット、クリーマーなどのパン菓子類もトランス脂肪含有量の高いものです。
これらの人工トランス脂肪は動物トランス脂肪より安全だと考えられていましたが、1990年代になって、心臓疾患を引き起こす原因であることが分かりました。
トランス脂肪は食品保存の安定化に役立っていますが、悪いコレステロール(LDL)を上げ、良いコレステロール(HDL)を下げる作用があるのが最大の欠点です。
従って、トランス脂肪を多く摂取した場合、血中に悪いコレステロールのレベルが上がるので、動脈血管壁にこれらのコレステロールが張り付き、血管が狭くなって血液の流れが悪くなり、ハートアタックや脳卒中を起こす危険性が高くなります。
米国で心臓疾患による死亡率が高いのは、日常よく使われている食品類にトランス脂肪含有量が高いのが原因であると分かり、食品からトランス脂肪を取り除く提案にFDAが踏み切ったわけです。
脂肪(コレステロール)を下げる漢方として霊芝降脂健心湯がよく使われています。
霊芝降脂健心湯の主要構成生薬の霊芝は約2千年前に書かれた「神農本草経」 に記載されており、古くから万病と不老長寿の薬として使われてきました。
最近の研究で霊芝の多方面薬効が立証されました(East-West Med, Digest 2, 1, 1990)。
無論、コレステロール降下作用があることも立証されています。その他の霊芝降脂健心湯の構成生薬の薬効は次の通りです。
丹参にはコレステロールと中性脂肪の降下作用及び血圧降下作用があり、狭心症や虚血性心臓病に有効なタンジノンが確認されています。
山査子、何首烏、沢瀉、黄精、枸杞子、桑寄生にコレステロールと中性脂肪の降下作用並びに降血圧、降血糖効果があります。
霊芝降脂健心湯を服用しながらも、トランス脂肪含有量の高い食物は極力避けるようにしてください。
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(2014年1月1日号掲載) |
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