膀胱炎(2013.9.1)

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son_new8.jpg曽 碧光

米国中医薬研究所所長

1932年台湾に生まれる。
東京大学農芸化学修士、米国カンサス大学微生物学修士、東京大学薬学博士、 元米国コネチカット大学病理学助教授、
第1 回世界中西医結合大会審査委員、セント・エリザベス病院 (ボストン) 筋ジストロフィー主任研究員、ドライ・アイ眼科研究所生化学顧問、元米国漢方研究所所長、現米国中医薬研究所所長。


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膀胱炎
       

Q : 膀胱炎でよく医者から抗生物質を処方してもらって服用しているのですが、抗生物質の服用を止めると、すぐ再発するので困っています。

長期間にわたる抗生物質服用による副作用も怖いので、膀胱炎の漢方療法がありましたら、お教えください。

 


A : 膀胱炎の漢方として猪苓湯が広く使われています。

猪苓湯は漢方のバイブルと言われている『傷寒論』に記載されており、排尿痛、残尿感、尿利の減少、口渇などの症状に使用する漢方とされています。

西洋医学的疾患の膀胱炎、尿道炎、淋疾、尿路結石、腎炎、腎盂炎などに適用するとされており、不眠症にも使われています。

猪苓湯は猪苓、茯苓、滑石、沢瀉と阿膠を調合したもので、猪苓と沢瀉は利尿の働きをし、滑石と調合することによって排尿痛を除き、阿膠は一緒に調合された他の生薬の働きを強化する作用を持っています。

また、阿膠は止血、鎮静の効果がある強壮剤でもあります。

猪苓、沢瀉、滑石は抗菌作用を有し、猪苓、茯苓、沢瀉は免疫増強効果を兼ね備えており、特に猪苓、茯苓に免疫増強多糖類が含有されていることが立証されています。

西洋薬にない漢方の強みは、症状を癒すと同時に身体の回復を早めるために、免疫促進効果と強壮効果のある生薬を常に含有していることです。

抗生物質を長期間服用したのに、服用を止めると膀胱炎が再発して困っている人が猪苓湯で治るのは、抗菌作用で膀胱内の細菌を抑制するとともに、免疫増強効果で細菌感染を防ぐ免疫力を強化することによって再発を防ぐからです。

実際に、抗生物質を長期間使用しているのに、膀胱炎の指標である尿の細菌数値が異常に高く、なかなか低くならない1歳と7歳の小児を担当している医師から相談を受けたことがあり、免疫増強効果のある霊芝人参黄耆湯を服用させたら簡単に治った例もあるので、膀胱炎の治療に免疫の増強も大きな役割を果たしていると考えられます。

 
(2013年9月1日号掲載)      

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